佳作C賞
境界線に屋根をかける
岩下 隆平
東京工業大学 環境社会理工学院 建築学系
今の住宅地には、家とその他公的空間を隔てる塀が未だに多く存在する。その線的な境界は、家を窮屈にし、プライベートの保護という意味を越えて強くそこに存在する。しかし、本来家とは、設計された建物のボリュームだけを指すものではない。住宅敷地という決定された線がありつつも、その線の上に設えを置いてみたり、そこで街の人と会話したり、BBQなどのイベントをしたりと、境界を空間的にうまく使うことで家の領域を拡張している瞬間がふとした時に発生していることがある。私にとって大きな家とは、家そのもの大きく設計するということではない。その家に内在するものを、誰のものでもない空間まで拡張して関係性をもつことである。本提案では、境界を空間化するために、線を引くのではなくそこに屋根をかけることでさまざまな活動を包み込める設えを設計した。この屋根は、延長された軒先となり、家は街に滲み出すことで、大きくて自由な存在になる。
(令和4年度)第29回ユニオン造形デザイン賞
テーマ:「大きな家」
審査員:平田 晃久氏 審査講評
賞 | 受賞者氏名/所属機関 | 作品名 | 共同制作者 | 賞金 (単位:千円) | |
金賞 | 早坂 愛佳 東北芸術工科大学 建築・環境デザイン学科 | 川を守る者達 | 作品 | 1,000 | |
銀賞 | 服部 圭佑 九州大学大学院芸術工学府 | 3センチの空をつかまえる家 | 作品 | 共同制作者/ 柳 雄貴 (九州大学大学院芸術工学府) | 500 |
銅賞 | 坂野 修平 フリーランス | 批評するキリン | 作品 | 300 | |
佳作A賞 | 杉山 峻涼 武蔵野美術大学 建築学科 | 大きなおだんごの家 | 作品 | 120 | |
佳作A賞 | 野中 郁弥 横浜国立大学大学院Y-GSA | 船を造ること、海を使うこと、街を育てることー造船業がつくる新しい大きさの中に暮らすー | 作品 | 120 | |
佳作B賞 | 宮本 皓生 工学院大学建築デザイン学科 | うつろいの映写機 | 作品 | 100 | |
佳作B賞 | 西尾 依歩紀 金沢工業大学 建築学部 建築学科 | 溜(タ)め家(イエ) ―ため池と共に生きる大きな家の提案― | 作品 | 100 | |
佳作B賞 | 野中 美奈 横浜国立大学大学院 Y-GSA | みんなでつくる大きなおうち ―ワザによりお互いを尊重し、みんなを受け入れる― | 作品 | 100 | |
佳作C賞 | 岩下 隆平 東京工業大学 環境社会理工学院 建築学系 | 境界線に屋根をかける | 作品 | 80 | |
佳作C賞 | 後藤 樹也 東北芸術工科大学 建築・環境デザイン学科 | 不完全が生む寛容な家 | 作品 | 共同制作者/ 竹澤 龍河 (東北芸術工科大学 ) | 80 |
合計10件 | 総額 2,500 |